インタラクション 2022
野﨑颯人(立命館大学)
インタラクション2022は2022年2月28日から3月2日にかけて3日間開催された.本シンポジウムは1997年より毎年開催され,今年で26回目の開催となる.当所,東京・学術総合センター内一橋講堂での開催が計画されていたが新型コロナウイルスの感染拡大の影響により,昨年に引き続き完全オンラインでの開催となった.今年は540人が参加した.
本シンポジウムは「基調講演」,査読を経て採否が決定される「登壇発表」,実機デモを行いながらの「インタラクティブ発表(デモ)」,および参加者との活発な議論を目的とした「インタラクティブ発表(ポスター)」から構成され,3日間にかけて行われた.登壇発表では36本の投稿があり,15本が採択された.また,インタラクティブ発表ではデモ発表が122件,ポスター発表が54件あり,全体の約21%にあたる37件がPC委員会によるスクリーニングを経てプレミアム発表に選抜された.
発表は全てZoom上で行われ,【講演会場】【インタラクティブ会場(午前)】【インタラクティブ会場(午後)】の3つの会場で発表が行われた.【インタラクティブ会場】では,各発表にそれぞれ一つのブレイクアウトルーム(小会議室)が割り当てられ,発表者は各部屋でそこにアクセスした聴講者に対して発表・説明を行う.発表の際にはZoom上での討論に加えて,発表資料の共有やコメント受け付け等にScrapboxが使用され,文字上での活発な議論が交わされた.さらに各発表時にはリアルタイムでYouTubeでのLive配信が行われた.インタラクティブ発表に関しては,Live配信が午前・午後ともにA・Bの2つのパートに分かれ,それぞれの発表ごとに5分ずつPC委員会による巡回中継での紹介が同時並行で行われた.「登壇発表」では,北海道大学の崔氏らの「Kuiper Belt: バーチャルリアリティにおける極端な視線角度を用いた入力手法の検討」が論文賞を受賞した.また,論文賞候補として,東京都市大学の市野氏らの「身体的アバタを介した自己開示と互恵性−「思わず話してた」−」が挙げられた.インタラクティブ発表では,参加者の投票により計10件のインタラクティブ発表賞(一般投票)と,発表当日にチーフプログラム委員団の巡回審査を経て選出されたインタラクティブ発表賞(PC推薦)が計7件選出された.また,協賛企業であるユニティ・テクノロジーズ・ジャパンより,Unityを使用した優れた研究に送られるUnity賞に,はこだて未来大学の竹川氏らの「デジタルカメン:組込型光センサアレイを用いた近接表情認識機能をもつデジタルマスクの設計と実装」が選出された.
2日目の「基調講演」では,今年は青山学院大学地球社会共生学部教授の古橋大地氏が登壇し,「地図の民主化が紡ぐデジタルツインの未来」との題で,オープンな地図データの重要性と,デジタルツイン実現に向けての現状の課題と展望についての発表をしていただいた.
また,今年は新しい取り組みとして,交流会イベント「もっと知りたいインタラクション!〜未知との遭遇〜」が開催された.このイベントはコロナ禍で減ってしまった交流の場,偶発的な出会いの場を提供し,様々な意見交換をし合うことを目的として行われた.時間毎に出会う人が入れ替わるブレイクアウトルームでは,学部・修士学生×博士学生の交流や,複数研究会間の意見交換などが行われ,盛り上がりを見せた.本イベントでは各ブレイクルームへのファシリテータの動員や,オンラインであることを活かした匿名での参加も行われており,一人で参加することが不安な人への工夫も見られた.
筆者の交流会イベントでの所感を以下に記したい.私自身は今回の学会が発表者としての初めての参加であり,学会の参加者や雰囲気もわからず緊張していた.研究においての知見も少なく,交流会の参加者の話についていけるか,理解することができるか不安になっていたが,いざ参加してみると学生だけの交流時間なども設けられており,気を張らずに楽しむことができた.他大学の様々な年代の学生の研究内容について知ることができ,自分の研究に活かすことができる知見を多く得ることができた.ファシリテータの進行により会話を円滑行うことができ,非常に有意義な意見交換ができたことをありがたく思う.
来年の「インタラクション2023」は,東京・学術総合センター内一橋講堂において,3月8日から10日の日程で行われる予定である.新型コロナウイルスの影響によりオンライン開催が続く中,来年のインタラクション2023こそは現地でデモ展示・発表ができることを願ってやまない.
公式サイト:https://www.interaction-ipsj.org/2022/
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