APMAR 2021
上田 俊太郎(奈良先端科学技術大学院大学)
2021年4月24日から25日の2日間にわたり,13回目となる Asia-Pacific
Workshop on Mixed and Augmented Reality 2021(APMAR)が開催された.本会議
は2008年から始まった Korea-Japan Workshop on Mixed Reality(KJMR)の後継に
あたる会議であり,アジア圏における複合現実感(MR)に関する研究の成果報告と
国際的な交流を目的としている.
昨年開催予定であったAPMAR 2020は新型コロナウイルスの影響により,中止となっ
た.2年ぶりとなる本会議は,韓国テジョンに位置するUniversity of Science &
Technologyをホストとし,オンラインで開催された.
本会議では21件の発表があった(Full paper 7件,Invited paper 9件,Poster
5件).発表内容は,VR酔いに関するものやMR環境下でのインタラクションなど多
岐に渡った.また,両日共に招待講演が行われた.1日目の講演は,ソウル大学校
Lee教授よる「Trends and issues of AR/VR devices」であった.AR/VRデバイス
には様々な種類があり,それぞれに長所・短所が存在する.本講演では様々なデバ
イスを紹介し,その特徴を整理した上で,視野角の問題など解決すべき課題につい
ても言及された.2日目の講演は,東京工業大学 渡辺教授による「Dynamics
Projection Mapping」であった.これは,動的な対象にリアルタイムで重畳表示を
行う技術であり,高速センシング技術と高速プロジェクターを用いることで,遅延
やずれを全く感じない程の精度を確立していた.講演で紹介されたデモ動画は非常
にスタイリッシュであった.
筆者の所属研究室からは,Influencing Driving Speed Using Perception-Based
Augmented RealityというタイトルでNicko R. CaluyaらがInvited paper枠で発表
を行った.これは,従来から広く研究されている物理的な観測情報に基づき情報生
成するA Rに代わり,ユーザの知覚を基に,情報生成し,表示するA Rを実現する研
究の一環である.その一例として,自動車走行時のドライバーに対し,各種視覚効
果を与えた際の,認知スピードの変化についての初期検討を紹介した.
会議全体としては,オンラインでの開催に全員が慣れてきているという印象を受
けた.質疑応答では,口頭による質問とチャット機能を利用したテキストの質問が
混在していた.口頭での質問は少し敷居が高いが,チャットであれば質問できると
いう方も多いのではないだろうか.本会議では活発な議論や意見交換が見られた
が,その要因の一つはこのチャット機能に因るものと予想している.オンラインの
利点を踏襲した対面での会議が開催されれば,従来以上に活発なものになることが
期待される.
http://apmar.net/