ROBOMECH 2021
牛山奎悟(電気通信大学)
ROBOMECH(ロボティクス・メカトロニクス講演会)2021 in OSAKAは6月6日から8日にかけて3日間開催された.昨年に続きCOVID-19の影響によりオンライン上で開催された.昨年のROBOMECH2020ではFacebookを利用した形式だったが,ROBOMECH2021では発表に関する情報を集めた独自のウェブサイト・YouTube・Slackを利用する形式だった.
ROBOMECHは作業ロボットやロボットハンドなどのロボティクスから,感覚や運動の計測,触覚など感覚インタフェースの研究など,様々な領域の研究発表があることが特徴である.講演会の初日にはオンライン上で様々なシンポジウムやワークショップ,技術に関するチュートリアルが開催され,後の二日間でポスター・デモ発表が行われた.ポスター・デモ発表は75件のOS(オーガナイズド・セッション)に分けられ,発表件数は合計で1,132件であった.
筆者は「触覚と力覚」というセッション内で発表を行った.発表の流れは以下の通りである.参加者は会議のプログラムや各発表ポスターの説明動画が掲載されたウェブサイトから興味のある発表を探し,気になる点など聞きたいことがある場合は発表ごとに用意されたSlackのチャンネルにて随時発表者と質疑応答する.Slack上のやり取りには,ある程度発表者に裁量がもたされており,Zoomを利用して議論や発表のデモを行っている発表者が多かったように感じる.また,ウェブサイト上にポスターの説明動画がまとめられているため,後から見返すことができるのは参加者に優しい設計だったと思う.
筆者が参加したセッションでは,触覚ディスプレイの開発や力センシング手法の提案,触知覚について調査した研究が発表されていた.筆者は「腕の能動的な運動における自己受容感覚刺激による把持物体変調」というタイトルで触覚刺激に関する研究を発表した.オンライン上で議論を通して有益な意見をもらうことができたが,触覚はやはりデモ体験をしないと伝えづらい部分や,逆に他の発表を聞く際には分からない部分があることを実感した.
最終日にはH. Harry Asada教授が招かれ基調講演が行われた.講演題目はSuperLimbs (Supernumerary Robotic Limbs) であった.SuperLimbsとは余剰な機械の腕や足を身体に装着して人の機能を拡張する人間拡張の分野である.教授は自身の研究を交えて,研究の始まりから,SuperLimbsの具体例,装着した腕や足の制御方法,身体への触覚フィードバック手法を紹介した.講演内で紹介されていた研究例として,例えば床面での作業時に肩から腕を生やすことで身体負荷が軽減させる研究や,手に指を二本新たに生やすことで把持動作を補助する研究が挙げられていた.個人的には,特に「SuperLimbsをどう制御するのか」について触れたことがなかったので,とても興味深い内容だった.
次回のROBOMECH2022は6月1日から4日にかけて北海道の札幌にて開催予定であり,対面実施が予定されている.COVID-19の状況によって変更される可能性はあるが,物理的に移動し少し特別感のある学会参加ができることを期待している.