CHI 2021
高橋哲史(電気通信大学)
2021年5月7日から16日まで(JST)の10日間にわたり,オンライン上にてThe 2021 ACM Virtual CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI’21)が開催された.CHIはHuman Computer Interaction (HCI) 分野の国際的なトップカンファレンスの1つである.1982年に誕生し,1985年より毎年開催されていたが,昨年2020年はCOVID-19の影響により開催が見送られていた.したがって公式に開催されるのは今年で38回目となる.本会議CHI’21は史上初の日本(神奈川県横浜市)での開催予定であったが,COVID-19の世界的な脅威が収まることなく,完全にオンライン上の開催となった.
今年はペーパトラックで2844件中749件の採択(採択率26.3%)であった.投稿数は昨年と比較して281件,10%程度の減少となった.Late Braking Workは688件中268件(39%)が採択された.ACM ToCHIまたは ACM TSCにて発表された論文から25件の招待講演があった.
CHI’21のオンライン会議はDeligateConnect社提供のWebプラットフォーム上で行われ,ライブビデオ会議機能はZoomが用いられた.会議は世界中の参加者に無理のない参加を可能とするため様々な工夫がなされた.まず全ての発表は必ず2度,異なる時間帯で行われた.また参加者はWeb上で5分の発表ビデオを非同期に閲覧し質問を残すことが可能な形であった.参加者にとっても運営にとっても初めてのことが多く続いたが,運営の多大な努力と参加者の理解と協力により成功裏に終わった.
会期のうち前後の各3日間,計6日間はワークショップが開催され,メインセッション(以下MS)は10日から13日の4日間に行われた.基調講演はChieko Akasawa氏とRuha Benjamin氏の2名によって行われた.両者に共通して公平に関するHCIのあり方を考えさせる講演であった.基調講演のほか多くの発表がYouTube上でアーカイブされている.筆者自身はMS初日(Day 4)のペーパセッションHaptics-A,B,及びMS 4日目(Day 7)のデモセッションにて発表した.Haptics筆者は手の甲からの電気刺激による各指の独立な屈曲を制御する手法について発表した.デモセッションはZoom上での展示が行われた.昨年中止されたCHI‘20で発表予定だったデモも今回発表の機会が与えられた.
この1年以上CHIに限らず多くの会議がオンラインであり不便もあったが,パンデミックに限らず現地参加が難しい人も参加しやすい形式でもあった.来年度はCOVID-19が完全に抑えられていることを願うが,これまでの知見が活かされたハイブリット形式を期待したい.
次回は2022年4月30日から5月6日にかけて,アメリカ・ロサンゼルス・ニューオリンズにて開催される予定である.詳細は以下Webページを参照されたい(https://chi2022.acm.org).
公式サイト:https://chi2021.acm.org