VRSJ Newsletter – 2025年11月号 – ( Vol. 30, No. 11)
日本バーチャルリアリティ学会 会員各位
Newsletter 2025年11月号 をお届けいたします.
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日本バーチャルリアリティ学会
Newsletter – 2025年11月号 – ( Vol. 30, No. 11 )
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https://vrsj.org/
< 内容目次 >
1. 報告集
◆ APMAR2025 参加報告
龍谷大学・井上 想子
◆ UIST2025 参加報告
東京大学・徳永 大翔
2. 学会からのお知らせ
◆ 主催・共催行事のご案内
◆ 協賛行事のご案内
◆ 論文誌に関するご案内
3. 関連情報
◆ CALL FOR PAPER
◆ CALL FOR PARTICIPATION
◆ ニューズレター編集委員会からのお知らせ
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1. 報告集
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|◆ APMAR2025 参加報告
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龍谷大学・井上 想子
第17回Asia-Pacific Workshop on Mixed and Augmented Reality(APMAR2025)が
韓国・釜山にて,2025年9月26日から27日の2日間開催された*1.APMARは2008年に始
まったKorea-Japan Workshop on Mixed Reality(KJMR)の流れを汲み,2016年から
アジア・オセアニア地域へと拡大した国際ワークショップである.複合現実感(MR)
や拡張現実感(AR)の分野における研究成果や実践的経験を共有し,この地域にお
ける研究協力を促進することが目的とされている.
今回の会議では 44件の発表が行われた.発表形式は8分間の口頭発表と2分間の質
疑応答で構成され,「Regular Paper」に加えて,研究の途中段階の成果を報告する
「Pitch Your Work Presentation」という枠も設けられていた.両者ともに同じ時
間配分で発表が行われ,完成度の高い研究から萌芽的な研究まで,幅広い段階の成
果が共有される場となった.プログラムは教育応用,VR体験設計,バーチャルエー
ジェント,空間ディスプレイ,視線追跡,触覚インタラクションなど多岐にわたる
セッションで構成された.質疑応答では,学生同士が積極的に質問を投げ合う様子
も見られ,類似する研究テーマについてより深く議論する機会となった.このよう
な活発な意見交換を通じて,自身の研究に繋がる新たな視点や糸口を見出した参加
者も多かったのではないかと感じられた.
基調講演では,カルガリー大学のKangsoo Kim氏による「Designing Intelligent,
Empathic, and Accessible XR Experiences for Human-Centered Futures」と題し
た講演が行われ,人間中心のXR体験設計における知的で共感的なアプローチについ
て議論がなされた.ユーザ一人ひとりの体験をどのように理解し,支えるかという
視点が語られ,技術の進歩だけでなく研究の目的そのものを見つめ直すきっかけと
なった.会議全体の方針や今後の方向性を考える上でも,非常に示唆に富む講演で
あった.
自身も第5セッション「Eye Tracking & Calibration」で発表を行った.同分野に
おける他の研究者の取り組みに強い関心を抱いた.なかでも,Taharaらによる「VR
Remote Magnified Viewing System Using an Ultrafast Pan-Tilt Camera」は特に
印象的であった.この研究では,超高速パンチルトカメラを用いたVR遠隔拡大表示
システムが提案されていた.超高速パンチルトカメラを利用することで,ユーザの
注視位置の視覚情報を高解像度で詳細まで提供し,最小限の遅延で映像を提供する
ことを可能としている.発表では,今後システムを用いた評価実験を実施し,複数
のユーザでの利用を可能とする拡張版のシステムの提供を視野に入れているとのこ
とであった.セッション全体を通して感じたのは,同じ分野であっても,研究者ご
とに発想や着眼点が大きく異なるということだった.自分の研究と近い領域の発表
を聴く中で,視線情報の扱い方や応用の方向性がこれほど多様なのかと改めて驚か
された.視線追跡の高精度化が進み,その結果としてより多様な視覚的体験が実現
されていけば,HMDを介した世界はますます自然で没入感のあるものになるだろうと,
将来への期待が膨らんだ.
一日目の終わりには,会場のホテルスペースにてバンケットが開催された.ビュ
ッフェ形式で各国の料理が豊富に用意され,韓国の伝統的なお酒であるマッコリな
ども振る舞われた.自由に席を立って交流できるセッティングとなっており,参加
者は思い思いに料理を楽しみながら,活発に交流を深めていた.会場には笑い声が
絶えず,研究発表では接点の少なかった参加者同士も気軽に会話を交わす姿が見ら
れた.このようなインフォーマルな雰囲気の中で,研究の話題だけでなく,各国の
文化や生活についての話題も飛び交い,アジア・オセアニア地域の研究者コミュニ
ティの一体感を強く感じられる貴重な時間となった.
全体として,複合現実感の幅広い研究領域に触れることができ,異なる視点から
の意見交換を通じて新たな知見を得られた有意義な会議であった.APMARは比較的小
規模なワークショップ形式であるため,発表者や参加者との距離が近く,深い議論
ができる点が魅力的であると感じた.
最後に,このような素晴らしい交流と学びの場を提供してくださった APMAR2025
組織委員会・後援機関ならびに関係者の皆様 に,厚く御礼申し上げます.
*1:詳細は https://www.apmar2025.site/ を参照
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|◆ UIST2025 参加報告
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東京大学・徳永 大翔
第38回ACM User Interface Software and Technologyシンポジウム(UIST 2025)
が,2025年9月28日から10月1日にかけて,韓国・釜山のパラダイスホテルにて開催
された.UISTは,Human-Computer Interaction(HCI)分野における世界最高峰の国
際会議の一つである. 本年の投稿数及び採択数は以下の通りであった.Papersは
947件の投稿から210件が採択(採択率22%),Demosは135件の投稿から88件が採択
(同65%),Postersは251件の投稿から110件が採択(同44%)されるなど,非常に競
争率の高い会議となった. 主要なプログラムは,これらの採択されたPapers,イン
タラクティブな議論が可能なPosters,そして実際に研究を体験できるDemosから構
成される.会場は終始活気に満ちており,至る所で参加者同士の活発な交流が見ら
れた.会期中はランチやコーヒーブレイクが頻繁に設けられており,こうした交流
をさらに促すための工夫が感じられた.
会期中には2件の基調講演が行われた.the Korea Advanced Institute of
Science and Technology (KAIST)のMeeyoung Cha教授は,社会規模のAIアプリケー
ションにおける倫理的課題と人類への貢献について論じた.また,Sungkyunkwan
University (SKKU)のChoong-Wan Woo教授は,生命とAIの境界をテーマに,AIとのイ
ンタフェースがいかにして生命の現実性に根ざし続けることができるかという問い
を投げかけた. Best Paper Awardには,リサイクル可能な3Dプリント電子回路に関
する「DissolvPCB」,MR空間における物理的制約からの解放を扱う「Reality
Promises」など,多岐にわたるトピックから計6件が選出された.中でも筆者が特に
注目したのは,身体に貼り付けられる非常に薄く柔軟な触覚デバイスに関する研究
である「MorphingSkin」であった.本研究は油圧駆動方式を用いることで,これま
で難しかった多様な触覚提示をシート状のデバイスで実現しており,VR/AR環境で仮
想オブジェクトに触れた感覚をリアルに再現するなど,幅広い応用が期待される.
これらの受賞研究は,ハードウェアの製作技術からインタラクションの理論まで,
UISTが持つ研究領域の広さを示していた.
筆者は会議期間中に行われたデモセッションにて,展示を行った.本研究は,空
中超音波触覚技術と2Dディスプレイを組み合わせた「バーチャルミラー」を用いて,
自分自身の顔に映像と同期した触覚刺激を提示するシステムに関するものである.
参加者からは,技術的な質問から応用可能性,そして,なぜ顔を対象としているの
かといった研究の根本的な動機に関する質問まで,多岐にわたる鋭い問いが投げか
けられた.こうした直接のフィードバックや質疑応答は,自身の研究を客観的に見
つめ直す上で非常に貴重な機会となった.
今年の発表からは,依然として生成AIが大きな潮流であることが確認できた.し
かしその一方で,「MorphingSkin」に代表されるような,人間の身体性に根ざした
ハードウェアやインタラクションの研究も存在感を示していた.AIによるコンテン
ツ生成が主流となる中で,物理的な身体感覚を伴う体験のデザインが,今後のHCI分
野における重要な差別化要因となっていくのではないだろうか.
UIST 2025の詳細や各賞の結果は公式サイト ( https://uist.acm.org/2025/ ) に
掲載されているため,参照されたい.なお,次回のUIST 2026は,2026年に米国・ミ
シガンで開催される予定である.
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2. 学会からのお知らせ
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|◆ 主催・共催行事のご案内
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■ 第31回日本バーチャルリアリティ学会大会
会期:2026年9月7日(月)~9日(水)
場所:富山県立大学射水キャンパス
大会ホームページ:準備中
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|◆ 協賛行事のご案内
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■ CG-ARTS検定(後期)
会期:2025年11月30日(日)
https://www.cgarts.or.jp/v1/kentei/
■ 第33回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ
(WISS2025)
会期:2025年12月3日(水)~5日(金)
場所:定山渓ビューホテル
https://www.wiss.org/WISS2025/
■ 国際画像機器展2025
会期:2025年12月3日(水)~15日(金)
場所:パシフィコ横浜 ホールD
https://www.adcom-media.co.jp/ite/
■ 第26回計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会(SI2025)
会期:2025年12月10日(水)~12日(金)
場所:広島国際会議場
https://sice-si.org/si2025/
■ HCGシンポジウム2025
会期:2025年12月10日(水)~12日(金)
場所:北九州国際会議場
https://www.hcg-ieice.org/hcg-symposium/2025/
■ バーチャル学会 2025
会期:2025年12月13日(土)〜14日(日)
場所:オンライン
https://www.vconf.org/2025/
■ サービス学会
会期:2026年3月3日(火)~5日(木)
場所:千葉商科大学 市川キャンパス
https://smartconf.jp/content/jsmbe65/
■ 第65回日本生体医工学会大会
会期:2026年6月5日(金)~7日(日)
場所:トークネットホール仙台
http://ja.serviceology.org/events/domestic2026.html
■ 日本機械学会
会期:2026年6月28日(日)~7月1日(水)
場所:福岡国際会議場
https://robomech.org/2026/
■ VRST2026
会期:2026年11月16日(月)~18日(水)
場所:東北大学電気通信研究所
https://vrst.acm.org/vrst2026/
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|◆ 論文誌に関するご案内
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https://vrsj.org/transaction/special_issue/
■ 投稿募集中の特集 1「複合現実感10」
◆ 申込締切:2025年11月17日(月)
◆ 論文締切:2025年11月25日(火)
◆ 掲載予定:第31巻2号(2026年6月末発行)
■ 今後の特集予定 1 「AIとVR(予定)」
◆ 申込締切:2026年2月上旬
◆ 論文締切:2026年2月中旬
◆ 掲載予定:第31巻3号(2026年9月末発行)
■ 今後の特集予定 2 「ハプティクス特集号」
◆ 申込締切:2026年5月上旬
◆ 論文締切:2026年5月中旬
◆ 掲載予定:第31巻4号(2026年12月末発行)
論文誌編集事務局のメールアドレスが変更になりました.
vrsj-edit[at]je.bunken.co.jp
※ [at]を@に変換下さい.
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3. 関連情報
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|◆ CALL FOR PAPER
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■ ACM TEI2026
Date: March 8 – 11, 2026
Place: Chicago, Illinois, USA
URL: https://tei.acm.org/2026/
Submission deadlines:
– Student Design Challenge: December 1, 2025
■ Augmented Humans 2026
Date: March 16 – 19, 2026
Place: Okinawa, Japan
URL: https://augmented-humans.org/
Submission deadlines:
– Papers: November 25, 2025
– Posters & Demos: January 26, 2026
■ IEEE VR 2026
Date: March 21 – 25, 2026
Place: Daegu, Korea
URL: https://ieeevr.org/2026/
Submission deadlines:
– Posters Title and information due: December 19, 2025
– Posters Two-page abstract and material due: December 22, 2025
– 3DUI Contest Entries Two-page abstract and video due: January 13, 2026
– Research Demos Two-page abstract and material due: January 6, 2026
– Doctoral Consortium submission deadline: December 3, 2025
– Tutorials submission due: January 9, 2026
■ IEEE Haptics Symposium 2026
Date: March 29 – April 1, 2026
Place: Reno, Nevada, USA
URL: https://2026.hapticssymposium.org/
Submission deadlines:
– Hands on Demonstration: January 23, 2026
– Work-in-Progress(WIP) Papers: January 23, 2026
■ ACM CHI 2026
Date: April 13 – 17, 2026
Place: Barcelona, Spain
URL: https://chi2026.acm.org/
Submission deadlines:
– Posters and Interactive Demos Deadline: January 22, 2026
– Student Mentoring Program: January 22, 2026
– Student Research Competition: January 22, 2026
■ ACM SIGGRAPH 2026
Date: July 19 – 23, 2026
Place: Los Angeles, California, USA
URL: https://s2026.siggraph.org/
Submission deadlines:
– Technical Papers Submissions Form: January 15, 2026
– Technical Papers Paper Deadline: January 22, 2026
– Technical Papers Upload Deadline: January 23, 2026
– Art Papers Long / Short: January 13, 2026
– Talks: To Be Announced
– Production Sessions: February 10, 2026
– Panels: To Be Announced
– Courses: To Be Announced
– Educator’s Forum: To Be Announced
– Frontiers: April 7, 2026
– Computer Animation Festival: To Be Announced
– Real-Time Live!: To Be Announced
– Spatial Storytelling: To Be Announced
– Immersive Pavilion: To Be Announced
– Art Gallery: January 20, 2026
– Posters: To Be Announced
– Emerging Technologies: To Be Announced
– Birds of a Feather: To Be Announced
– Appy Hour: To Be Announced
– Student Research Competition: To Be Announced
– Technical Workshops: To Be Announced
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|◆ CALL FOR PARTICIPATION
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■ ICAT-EGVE 2025
Date: December 3 – 5, 2025
Place: Karlskrona, Sweden
URL: https://a.bth.se/icat-egve2025/
■ ACM SIGGRAPH ASIA 2025
Date: December 15 – 18, 2025
Place: Hong Kong SAR, China
URL: https://asia.siggraph.org/2025/
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|◆ ニューズレター編集委員会からのお知らせ
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ニューズレター編集委員会では,「会議・イベント参加報告」「会員便り」「新製
品情報」を,広く会員の皆様から募集しております.
お問合せ・寄稿先:
日本バーチャルリアリティ学会事務局
office[at]vrsj.org
※ [at]を@に変換下さい.
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[ニューズレター編集委員会]
<委員長> 吉田成朗
<編集長> 藤本雄一郎・田辺健
<委 員> 磯山直也・平尾悠太朗・田井中渓志・脇坂崇平・亀岡嵩幸・堀江新・
青山一真・中村文彦・近藤亮太・大野雅貴・大西悠貴・伊東健一
<顧 問> 柳田康幸・武田博直
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発行者: 吉田成朗
編 集: ニューズレター編集委員会(編集担当:磯山直也)
発行日: 2025年11月25日
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