AH2018 参加報告
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|◆ AH2018
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萩原 翔(慶應義塾大学)
2018年2月7日から9日にわたり,Augmented Human (AH) 2018が韓国,ソウルの
Seoul National Universityで開催された.今回で9回目を迎える本会議では,その
名の通り,人間の拡張(Human Augmentation)をテーマとした研究を扱っている.各
研究で共通するのは,科学技術を用いて人間の日常体験を補助・拡張し,それまで
人間が感じたことのない体験を提供する,という共通題目であり,視線・嗅覚・触
覚・身体・運動と,その議論の対象は多岐にわたる.
開催中の3日間ともに基調講演の後,25件の論文が共通のセッションごとに発表
された.基調講演はそれぞれ,Kyung Hee Cyber UniversityのJihoon Jeong氏,
University of South Australia のMark Billinghurst氏,LGエレクトロニクスの
Chul Bae Lee氏によって行われ,どれも人間の拡張に関する最近のトレンドを,わ
かりやすく紹介してくれた.続く論文発表はSensing・Interaction・Visual/Smell
Augmentation・Physical/Haptic・Congnitive・Tele Augmentation/Motionという6
つのセッションに分けられ,様々な内容の論文が発表された.各セッションともに
共通して,非常に日本人の研究発表が多いという点が見受けられた.開催地が韓国
ということもあり,参加者の半数近くが日本人であった.この分野における日本人
の活躍を強く実感することができた.
また発表の合間にはコーヒーブレイクやデモ・ポスターセッションが催され,研
究者同士での活発な議論が交わされていた.デモ・ポスターセッションは学生が多
く,みな各々の研究に対して真摯に取り組んでいる様子が伝わってきたため,自分
の研究に対しても意欲が掻き立てられた.また,学外の方々と,研究に関しての意
見交換する場は,大変,新鮮であり,特に海外の方々との英語でのディスカッショ
ンは,非常に刺激的な体験だった.
フルペーパーのベストペーパーは,東京大学の暦本研究室による,水中の推進力
向上のための,水流の3次元解析技術を提案した論文に送られた.本研究で提案さ
れる大容量向けのトレーサ粒子(tracer particles)は,レーザーを用いる既存の研
究に比べ,スイミングプールのような大容量の水中でも使える点,人体への危険が
小さい点などが優れているという.これからもわかる通り,ひとくちにAugmented
Humanといっても,扱う領域は大変幅広い.1回の参加で広い領域の研究をキャッチ
アップすることができるため,様々な研究領域の最新の研究活動を把握する上でも
有益であった.
来年度のAugmented Human2019はフランスのシャンパーニュで行われる.シャン
パンの産地で知られるこの地で行われる会議では,人間の味覚を“Augment”する
研究を広く募集する予定だそうだ.
AH2018の公式ページ: http://www.sigah.org/AH2018/