TEI 2017 参加報告
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|◆ TEI 2017 参加報告
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中垣 拳(MIT Media Lab)
TUI(Tangible User Interface)および身体性を持ったインタフェースに関する
学会,TEI2017が,アジア初の開催として横浜(慶應義塾大学日吉キャンパス)で
開かれた.11年目となった今回は,日本での開催だったこともあり,”Scifi::Rea
lity”および”温故知新”が学会のテーマとして設けられた.TEIは,口頭・デモ・ポ
スター発表のいずれも,一律のペーパーフォーマット(SIGCHIダブルカラム)およ
び締切での投稿という珍しい形式を採用している.ペーパーフォーマットでは,41
件の採択(採択率27%)があり,うち37%がトークのみ,27%がデモのみ,12%がポス
ターのみ,24%がトーク及びデモという発表形式をとっていた.ほかにも,Work in
Progress, Art Exhibition,Graduate Student Consortium,Student Design Chall
engeなどのプログラムが学会を盛り上げた.
筆者は,昨年から引き続いての参加となったが,TEIは他の学会に比べて,ここ
数年はデザイン色が強い独自の学会となったように感じる.特に,口頭発表では西
欧系の大学・機関からの発表が目立ち,新しい技術やデバイス・インタフェースに
関する研究は比較的少なめで,特にデザインフレームワークに関する論文の発表が
目立った.これは,過去の研究を比較・分析しながら,新しいフレームワーク・視
点で捉え直し,次なるインタフェースの設計への応用を提案するスタイルの論文で
ある.具体的には,インタラクティブな建築や,モジュラー組み立て型インタフェ
ースのためのデザインフレームワークなどの発表が見られ,後者はベストペーパー
を受賞した(What a Life! Building a Framework for Constructive Assemblies)
.一方で,TUIを,実践的な課題に応用する研究も多く,DNAデータとのインタラク
ションや,発達障害を持った子供の教育のためのインタフェースなどの発表があっ
た.また個人的に印象に残ったのは,Learning from the Crackle Exhibitionとい
う論文の発表で,1975年にアムステルダムの博物館で開かれたインスタレーション
の展示会を振り返り,残っている記録や写真,作者のコメントからこの展示が,TU
Iの概念を予見し・TEIのコミュニティの次の発展への可能性を示唆するような内容
であった.まさに“温故知新”とも言えるが,このようなスタイルが論文になるこ
とに驚いた.
一方デモ発表では,新しいインタフェースおよびアイデアの種が,沢山見られた
ことが印象的で,まさにタンジブルな展示が多く,参加者が研究に触れながら発表
者との活発な議論をする場となっていた.TEIは全体として,TUIの概念の裾野を広
げその知見を深める役割を果たす学会となっているように見られるが,このような
研究の概念をいかに次のステージに具体的に進化させれるか(示唆するだけでなく
),ということが課題のひとつのように感じた.次回のTEI2018は,3月4-7日にス
ェーデンのストックホルムで開催される予定である.
https://tei.acm.org/2017/