Eurohaptics 2016 参加報告
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|◆ Eurohaptics 2016 参加報告
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柴原 舞(奈良女子大学)
2016年7月4日から7月8日にかけて,ロンドンのImperial collageで Eurohaptics
2016が行われた.周辺にはハイドパークや,博物館・劇場などが点在し,自然と
歴史を肌で感じられる場所であった.本会議では36件の口頭発表(採択率 22%)と
62件のポスター発表(採択率 39%),48件のDemoと42件のWork-in-Progress が
採択された.
初日は6つのWorkshopが行われた.この中で,筆者は「Thermal perception」に
参加した.ここでは 4人の専門家が登壇し,基礎的な温冷感の知覚から,温冷刺
激提示デバイスなど応用研究を解説した.初心者から専門家まで参加し,時間い
っぱい議論が交わされた.
セッションは,「Perception of hardness and softness」「Haptic devices」
「Haptics and motor control」「Tactile cues」「Control of haptic interface
s」「Thermal perception」「Robotics and sensing」「Applications」で構成さ
れ,それぞれシングルセッションで行われた.本会議では,比較的ヒトの認知や
感性に注目した研究が多くあった.Best Paperを受賞した発表は,「Temporal Int
egration of Tactile Inputs from Multiple Sites」である.ここでは,異なる2
部位に,同周波数で逆位相の振動を与える.このとき振動の周波数を2倍に知覚さ
せるべく,振動の振幅や刺激を与える距離の違いによる影響を検討した.その結
果,刺激の距離が近いほど,実際よりも高周波に感じるという知見を得た.
PosterとDemo発表は,日替わりで行われ,毎日多くの人が会場を埋めた.Best D
emoを受賞した「Tension Based Wearable Vibro Acoustic Device」は,モータの
付いた糸を胴回りに巻きつけ,音楽の響きを身体で感じることができるというも
のである.シンプルな機構ながらも,重低音の響きが心地よいものであった.筆
者もPosterとDemoで,布の湿り感の錯覚について発表を行った.説明だけでは(
英語という壁もあり)十分に伝えきれない部分があったが,デモを行うと,一目
瞭然ならぬ,一度「触れる」だけで研究の本質を伝えることができた.言葉を超
えて理解されるという点に,触覚研究の魅力を実感した.
さらに,Touch and Go EventとしてRoyal Institutionでデモと講演が行われた
.この建物は1799年に科学の教育や普及のために設立されたもので,内部は荘厳
な雰囲気であった.電通大の梶本先生は,身体における触覚アプリケーションに
ついて講演を行った.聴衆にハンガーを配り,ハンガー反射を体験してもらうな
ど,聴衆を巻き込み,終始笑いの絶えない講演であった.内容はもちろん,発表
の様子から,一研究者として倣うべき点は多くあった.
学会期間中は全日晴天に恵まれ,期間中は多くの人が大学内の芝生の上でラン
チをとるなど,非常に心地よい雰囲気の中で行われた学会であった.
来年度のWorld haptics2017はドイツ,Eurohaptics2018はイタリアで開催され
る予定である.
http://www.eurohaptics2016.org/
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