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2015年4月27日

IEEE VR 2015 参加報告

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|◆ IEEE VR 2015 参加報告
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伊藤 勇太(ミュンヘン工科大学)
 今年のIEEE VRは3月23日から27日にかけて,南仏プロヴァンスのアルル(Arles)
にて開催された.本会議はVR分野で最も権威のある国際会議であり,またヨーロッ
パでの開催は実に十年ぶりである.会期のうち前半二日間は例年通りIEEE 3DUIと
併催され,後半三日間が主会議とされた.3DUIを含めた登録者数は520名に上り,
登録国は仏,日,独,米,英の5カ国が全体の6割を占めた.主な企画として,基調
講演1件,論文発表35件(内Long Paper 13本,Short Paper19本,掲載済みTVCG論
文3件),パネル討論4件,インダストリアル発表18件,Lab/Project発表25件,ポ
スター発表87件,チュートリアル4件,デモ発表22件が実施された.
 投稿数はLong Paper 94件(63.9%),Short Paper 53件(36.1%)であり,採択
数(率)はそれぞれ13件(13.8%),6件(11.3%)であった.更にLong Paper投稿
論文からは13件(13.8%)がShort Paperとして追加採択され,全体採択数(率)は
32件(21.8%)となった.採択済みLong Paperは,昨年に引き続きJournal Paperと
してIEEE TVCGに直接採録されている.主会議1日目に論文賞が,閉会式にデモ賞
が発表された.各賞はRunner-Up及びBest Long Paper Award各1件,Best Short
Paper Award 1件,Runner-up及びBest Demo Award各 1件であった.
 基調講演にはMel Slater教授(UCL&バルセロナ大)が招かれた.教授は認知神経
科学の観点から,VR技術がどの様に人の自身に対する認識を改変できるかを,既存
研究を交えつつ紹介した.Best Long Paperには岩井(大阪大学)らによる広被写
界深度プロジェクタが選ばれた.これは電子式焦点可調節レンズによるFocal
Sweepが,深度方向に均一な点広がり関数を生成することを利用している.手前味
噌ではあるが,筆者もHMD校正に関するセッションにてLong Paperを1件発表した.
これは光学透過型HMDにおける視点依存な非線形光学歪みを,Light Fieldとして計
測し除去する手法である.本セッションでは筆者が第二著者を務めるLong Paper
2件も共に発表された.他セッションでは物理モデルを反映した聴覚や触覚再現に
関する発表,VR環境での群衆再現やユーザーの歩行誘導に関する発表等があり,民
生用HMDの市場動向やVRソフトウェアのオープンソース化に関するパネル討論等も
行われた.今回の会議では,去年にもましてOculus Rift HMDを使った研究・デモ
が普及している印象を受けた.残念なことに,ポスター展示が別棟かつ日毎に入れ
替わりだったため,見る機会が限られていた.
 また特別企画として,Carrieres de Lumieres(光の採石場)というプロジェク
ション・マッピングによるマルチメディアアートの見学が催された.70年代まで採
石場だった広大な人工洞窟(4千平米),その内壁全面に著名な芸術作品を投影す
る本アートは大規模なCAVEシステムともいえ,VR参加者からは感嘆の声が聞こえた.
 ところで今回のIEEE VGTC VR Technical AwardはOculus Rift創業者三名に授与
されたが,受賞者らはFacebook関連展示会のため本会議には参加していないとのこ
とだった.
 IEEE VR 2016は再び米国に戻り,サウスカロライナ州グリーンビル(Greenville)
で開催される.
http://ieeevr.org/

IEEE_VR2015

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