HOME » 学会参加報告 » ICAT-EGVE 2014 参加報告
2014年12月25日

ICAT-EGVE 2014 参加報告

+———————————————————————-+
|◆ ICAT-EGVE 2014 参加報告
+———————————————————————-+
古川正紘(大阪大学)
 ICAT-EGVE 2014は今回で第24回の開催となる人工現実感とテレイグジスタンスに関する国際会議である.今年は2014年12月8日(月)~10日(水)の日程でドイツのブレーメン大学にて開催された.発表件数はPaperが11件(内3件Short,採択率38%),Demo 4件,Poster8件であった.
 初日の基調講演は,理化学研究所の藤井直敬氏によりSubstitutional Reality (SR:代替現実) Systemとは何か,と題した講演が行われた.SRシステムとは,Video See Through HMDを着けた体験者に気づかれないように実時間映像と過去映像を切り替え与えることで,過去と現在の区別がつかない高いリアリティを与えるシステムである.同システムは,実時間体験のリアリティを下げることで,過去映像がもたらすそれと一致させることに成功した点に本質があり,技術的な優位性を追い求めたのではない.つまり,いかに現実感と人工現実感のギャップを埋めるかに着目すべきであるのだ,という強いメッセージが聴衆に投げかけられた.さらに,技術がハイエンドであるがゆえにVR/AR体験の大衆化に課題があったが,段ボール製のHMDであるハコスコを製作し解決を狙った点も強調された.二日目には,University College LondonのProf. Dr. Anthony SteedによるBEAMING between Virtual and Reality: Studies in Asymmetric Telepresenceと題した基調講演が行われた.バーチャル環境をどのように構築するかという観点で議論を進めた結果, BEAMINGと名付けられた感覚と行動を遠隔地で再現するという概念に帰着したとの主旨であり,テレイグジスタンスの概念の重要性を裏付ける講演であった.三日目には, コンピエーニュ工科大学のProf. Dr. Indira ThouveninからLessons learnt from the invisible part of virtual realityと題した講演が行われ,分野横断的にVR技術の恩恵が得られているという印象を受けた.
 参加者数は約150名(Asiaからは12%)でありEuroVRとの併催であったためヨーロッパ圏からの参加者が大数を占めた.Best Paperには,fMRIを用いた脳活動計測を行いながら部分的に非現実的な状況を織り交ぜたバーチャル環境を体験させることで,現実感と脳活動との関連性を明らかにすることを狙った論文が選ばれた.筆者にとっては,指先を足のように動かしながら異なるピッチを持たせた凹凸の上を歩かせることで,生起されるアバタのサイズ感を検証しようとしたUjitokoらの研究が印象的であった.筆者はデモ展示として参加し,立ち上がると巨大化したかのような上空視点を得られる巨人体験について,マルチコプタを実際に飛翔させてデモ展示を行った.Technical Demoは広大なブレーメン大学内の各所にて実施され,ボリュームがあるものであった.
 市中心部はクリスマスマーケットで華やいでいたが,少し離れた隠れ家レストランが建ち並ぶ区画は,さながら映画の一場面に潜り込んだかのような喜びを覚えた.次回のICATは2015年10月28日?30日にて京都市国際交流会館で開催され,SIGGRAPH ASIA 2015直前の日程のため併せて参加されたい.投稿締切は4月上旬を予定している.
http://icategve14.uni-bremen.de

Category: 学会参加報告

この記事へコメントすることはできません