HOME » 学会参加報告 » 第22回人工現実感研究会 参加報告
2012年7月25日

第22回人工現実感研究会 参加報告

+———————————————————————-+
|◆ 第22回人工現実感研究会 参加報告
+———————————————————————-+

児島陽平 (大阪大学)

2012年6月26日,27日の2日間,第22回人工現実感研究会が,東京大学・本郷キ
ャンパスの山上会館にて開催された.今回の研究会は,日本バーチャルリアリテ
ィ学会ならびに電子情報通信学会マルチメディア・仮想環境基礎研究会(MVE)の
共催,ヒューマンインタフェース学会研究会(SIG-VR)および映像情報メディア
学会ヒューマンインフォメーション研究会との連催であった.2日間でのべ110名
の参加者を集め,「マルチモーダルHI,BCI」,「サービスや生活とVR / AR」,
「VR / MRのための画像コンテンツ生成」,「感覚とヒューマンファクター」,
「HMD」,「ハプティックとVR / AR」の6つのセッションにて,計22件の口頭発表
が行われた.多くの興味深い研究発表が行われたが,ここではその中の2件につい
て紹介する.
1つ目は,東京大学のソらによる「ミュージアムにおける名札を用いた来館者の
鑑賞方向センシングの基礎検討」である.この研究では,ミュージアムの来館者の
興味,関心を抽出し,ミュージアムをより魅力的なものにするための鑑賞ログとし
て来館者の位置と鑑賞方向を挙げ,これらをセンシングするための検討が行われて
いた.来館者が首から下げた名札に仕込んだRFIDと周囲の複数のアンテナを用い,
来館者の背面側のアンテナが受信する電波強度が弱くなることを利用して,ミュー
ジアム内の来館者の位置と鑑賞方向をセンシングしている.実験を通じて,適切な
アンテナの高さや,測定領域内にいる来館者の人数を変えて識別精度を評価したこ
とが報告された.
2つ目は,東京大学の宇塚らによる「VR空間でのインタラクションにおけるしっ
くり感の定量評価」である.実世界での動作経験によって形成されたメンタルモデ
ルと実際の操作が強く結びついているときに得られる感覚をしっくり感と定義し,
実世界で行えない動作をVR空間で行った際に,どのようなフィードバックを返せば
より強いしっくり感を与えられるかを検討していた.「手を突き出すと爆発が生じ
る」というVR体験を用いた実験を行い,動作速度とフィードバックの大きさの間に
正の相関が成立するときにしっくり感が大きくなるという結果が報告された.
自身の研究発表では,「空間内の複数人員配置のための指示位置提示手法に関す
る検討」について発表した.演劇練習のように監督者が作業者に対し位置に関する
指示を発する場面において,指示位置を動的に床面に提示する手法を提案した,こ
れにより,一般的に用いられる静的な指示位置提示に比べて,作業者の移動が正確
になったことや,短時間で位置指示を学習できる可能性が示唆されたことを報告し
た.質疑ではより実際の作業環境に近い設定を導入した実験を行う必要性などにつ
いてアドバイスを頂くことができ,今回の研究会を通じて,今後の研究を進めるに
あたって重要な視点を得ることができた.
今回の研究会では,2日間を通じて各発表に対して活発な議論が行われ,発表者,
参加者双方にとって充実した研究会となったように感じられた.発表者として参加
した筆者にとっても,最先端の研究の動向を知るとともに,参加者の皆様から貴重
なアドバイスを頂くことができ,非常に良い刺激を受けることができた研究会であ

った.

Category: 学会参加報告

この記事へコメントすることはできません