UbiComp 2011 参加報告
+----------------------------------------------------------------------+ |◆ 第11回VR医学会学術大会 参加報告 +----------------------------------------------------------------------+ 福井 類(東京大学) 2011年9月17日から21日までの5日間(チュートリアル,ワークショップを除くと3 日間),中国・北京にてUbiComp2011が開催された.UbiCompはユビキタスコンピュ ーティングをテーマとする有力な国際会議の一つであり,今年で13回目の開催とな る.学会参加者は442名で,昨年(約350名)より100名程増加した.本年度の論文投 稿数は302 件あり,そのうち50 件(Full 44 件,Notes 6 件)が採択された.採 択率は16.6%と,昨年(19.3%)より3%程低下した. 口頭発表ではTaxiなどに搭載されたGPSや携帯電話の通信基地局切り換え判別に よる位置情報を活用する研究が多く見られ,またスマートフォンを活用したサービ スを実現する際に保護すべきプライバシーに関する研究が複数見られた.本年度も デモ・ポスター・ビデオがそれぞれ別のセッションで行われた.ビデオは本セッシ ョン中(口頭発表の最後)に上映され,多くの参加者に見てもらうことができてい たが,参加者からはビデオ発表を1つのセッションとして独立させるべきという意 見が出ていた. 筆者の専門はメカトロニクスシステム(ロボット)設計であり,今回がUbiComp 初参加であったが,新しい手法・システムの技術論だけでなく,その背景となる社 会性(社会科学)を議論している点がロボットの業界とは異なり,非常に興味深く感 じられた. 以下で口頭発表の一部を簡単に紹介する. スマートフォンなどの携帯型デバイスではない,人の位置推定方法としてMIT Media LabのNan-Wei Gong氏らは"Leveraging Conductive Inkjet Technology to Build a Scalable and Versatile Surface for Ubiquitous Sensing"と題して発表 を行っていた.インクジェットプリント方式で作られた銅箔付きのシートをアンテ ナまたは配線とすることで人の近接による静電容量変化や振動を計測することが可 能となっており,人の動作に基づくインタラクティブな空間を構成する応用を目指 しているとのことであった.同様な研究としてUniversity of Washingtonの Sidhant Gupta氏らは" LightWave: Using Compact Fluorescent Lights as Sensors"の発表において,Compact Fluorescent Light blub(電球型蛍光灯)を人の 近接認識に用いる方法を提案していた. Carnegie Mellon UniversityのJason Wiese氏らは" Are you close with me? Are you nearby? Investigating social groups, closeness, and willingness to share"と題して,プライベートな情報を共有する指標となる特徴量について発表 をしていた.興味深いのは,一緒に居ることが多い人よりも,連絡を良く取り合う 人の方が個人的な情報を共有するのに抵抗がないということである.本研究の結果 を鑑みると,スマートフォンなどの携帯型デバイスは親密さを含めた人間関係を分 析するのに,非常に強力なツールとなっていることが伺える. University of MassachusettsのMohamed Musthag氏らは"Exploring Micro- Incentive Strategies for Participant Compensation in High-Burden Studies" と題して,フィールドワークを行う際にどのように報酬を与えると,効果的なデー タ収集が行えるかについて発表を行った.報酬の与え方によって,回答者の対応( 回答の正しさ)に大きな変化があるため,課題に応じて適切な戦略を選ぶことが重 要であると述べていた.フィールドワークを重視するUbiCompらしい研究だという 印象を受けた. 我々の研究グループも"Hand Shape Classification with a Wrist Contour Sensor: Development of a Prototype Device"と題して口頭発表(Note)及びデモを 行った.本発表は手首に巻きつけたフォトリフレクタアレイにより手首凹凸を計測 し,その凹凸データから手先の形状を推定するという研究であるが,デモでは見学 者に実際に装着して体験してもらうことが出来,好評を得ていた.一方で,手先の ジェスチャは国によって標準形状が異なるようで,そのような知見を得ただけでも 本会議で発表を行った成果があったと言える. 次回のUbiComp2012は2012年9月5日から8日にかけて米国・Pittsburghで開催され る予定である.
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