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2024年12月25日

ISMAR 2024

楠山 弘基(大阪大学)
 本年度のIEEE ISMAR (IEEE International Symposium on Mixed and Augmented
Reality) は,10月21日から25日にかけて米国シアトル近郊のベルビューで開催さ
れた(https://ieeeismar.org/).本会議はAR/MR分野のトップ国際会議であり,今
回で23度目の開催となる.本年も現地とオンラインでのハイブリッド開催であり,
初日は今回が初開催となるIEEE International Symposium on Emerging Metaverse
(ISEMV) と併催された.本年度の参加登録者数はISEMVと合わせて580名 (オンラ
イン含む) に上り,登録者の国別割合は上位から米(全体の4割),韓,独,日,中
の順であった.主な企画として,基調講演2件,論文発表188件 (内Journal paper
44件 [採択率16%],Conference paper 133件 [採択率30%],TVCG掲載済み11件),
パネルディスカッション1件,ポスター114件,ワークショップ11件,チュートリア
ル3件,デモ20件が実施された.
 基調講演には,Hrvoje Benko氏 (Meta Reality Labs Research) とMaud Marchal
氏 (University of Rennes, INSA) が招かれた.Benko氏は,AR技術とAI技術を組
み合わせた次世代の情報提示システムと人間がどのようにインタラクションするか
という観点で,Meta社の最新製品や動向を紹介した.Marchal氏は3Dインタラク
ションの中でも触覚技術に焦点を当て,近年の革新的な触覚インタフェースに対す
る知覚的考察を踏まえながら,今後の発展に向けた技術的課題を紹介した.またパ
ネルディスカッションでは,本分野の急速な技術革新や普及の裏で曖昧になりつつ
あるVR/AR/MR/XRといった用語の定義について,複数の専門家がその歴史的背景や
解釈の変遷を議論し,コミュニティ内での共通言語の確立を図った.このトピック
は多くの参加者の興味関心を惹き,多数の聴衆が参加する盛況なセッションとなっ
た.
 口頭発表では,AR/MR・触覚デバイス,Computer Visionに関連する技術的な内容
から,人間の知覚・アバタの身体性を考察するような実験的内容まで,多岐にわた
る研究が報告された.私事ではあるが,筆者もARディスプレイ技術に関するセッ
ションにおいて,遮蔽物による影と焦点ボケとを同時に抑制可能なプロジェクタに
ついて発表を行った.ここでは薄型で軽量な大開口フレネルレンズを用いて投影光
を広い角度から集めることで,一台のプロジェクタで影抑制を実現するアプローチ
を取った.またポスター・デモ会場では,発表者と参加者の間で活発な議論が交わ
され,賑わいを見せていた.特にデモ発表では産業界と学術界の研究者が入り混じ
り,双方の視点から研究開発に関する意見交換が行われた.
 Best Journal Paper Awardには,人間の動き予測において過去の姿勢情報のみで
なく,インタラクション対象である三次元物体のバウンディングボックス情報を利
用することで,予測精度を向上させる研究が選ばれた.また本年度はさらにBest
Student Journal Paper Awardとして,人間の視覚モデルをNeRFのレンダリングフ
レームワークに組み込むことで計算効率を向上させる研究が選ばれた.
 来年のIEEE ISMARは韓国・大田(テジョン)にて開催される予定である.
公式サイト:https://ieeeismar.org/

Category: 学会参加報告