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2024年6月25日

CHI 2024

浜崎 拓海(電気通信大学)
5月11日から16日にかけて,アメリカハワイ州のHonoluluにてThe ACM CHI Conference on Human
Factors in Computing Systems(以下CHI)2024が開催された.本会議ではHCI分野におけるトップカン
ファレンスの一つであり,参加者は3955名(現地:3264名,オンライン:691名)に上った.
 開催41回目を迎える本会議は1058件のPaper(採択率26.3%),391件のLate-Breaking Work(33.8%),
77件のInteractivity(49%)が採択された.発表件数が非常に多く,20を超えるパラレルセッショ
ンで開催された.中でもAIやLLMを使用した研究が特に多く見受けられ,“AI”や“LLM”とついてい
るPaperセッションは37であった.筆者の研究領域である“Haptics”を冠するセッションが6程度で
あることからもAI研究の勢いと規模の大きさがうかがえる.13日の基調講演はKate Crawford氏が経済
をはじめとした複数の領域にわたって,現存するAIがもたらす影響について取り上げた.15日の基
調講演ではSamuel Ohukani’ōhi’a Gon氏がハワイ諸島の標高と湿度の多様性による生態学的ライフ
ゾーンの豊かさと,その可能性を多角的な視点から調査したことについて語った.
 筆者はメインセッション初日の“Haptics: Force, Thermal and Tactile Feedback”にてアルコ
ールを用いた低電力な冷覚提示手法を発表した.さらにここでは筆者の研究領域の中で興味深か
ったものを2点紹介する.田中らによる“Haptic Source-effector: Full-body Haptics via Non-
invasive Brain Stimulation”では,経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いて体性感覚野を刺激し,手,
腕,顎,脚といった複数の部位に触力覚をレンダリングする研究である.本研究では神経科学で
使用されていた非侵襲な脳刺激手法であるTMSを初めて触覚レンダリングに適用した試みであり,
非常に興味深いものであった.Kimらの“Big or Small, It’s All in Your Head: Visuo-Haptic
Illusion of Size-Change Using Finger-Repositioning”では回転リングを用い,指の位置を変え
ることで物体の大きさの知覚を変調させることを提案している.指の位置を変えるだけでは大
きさの知覚は変化せず,視覚的なコンテキストと組み合わせることで短い時間間隔で広範囲な
サイズ変化をレンダリングすることに成功した.また,これら2つの研究はHonorable Mention
を受賞している.
15日の夜にはJapan Nightが開催され,大学の先生方や学生,企業の方々と交流を深めた.国外
の機関に所属している日本人研究者や自分の研究領域と異なる専門分野の方々とも接し,スコ
ープの広い大規模な学会ならではの貴重な交流ができ,大きな刺激を受けた.
 次回CHI2025は4月26日から5月1日の期間にパシフィコ横浜で開催予定である.CHI2021は
COVID-19の影響でオンラインのみの開催であったため,順調に進めば初の日本現地開催となる.

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