ヒューマンインタフェースサイバーコロキウム
許 佳禕(筑波大学)
新型コロナの影響で,2020年9月に静岡で開催と予定されるヒューマンインタフ
ェースシンポジウム2020は中止となった.代わりに,2020年10月17日〜18日にかけ
て,「ヒューマンインタフェースサイバーコロキウム(HIC2)」がサイバーな環境を
通して開催された.今回の会議では,ヒト・モノ・コトの繋がりを中心に,102件
の一般発表,特別講演が行われ,またコロナ時代に登場した様々な問題をめぐり,
パネル討論とワークショップなども開催された.
一般発表では,生活支援,インタフェースデザイン,ロボット,およびVR・AR・
MRなど幅広い研究が発表された.この中で,原園氏ら(京都大学)が発表した「環
境への情報付与によるAR訓練構築システムの開発」が興味深いと感じた.この研究
では,プログラミングの知識や技術を持っていない人でも容易に現場でAR訓練環境
を構築できるシステムを開発した.現場を直接見ながら訓練シナリオを考案でき,
かつプログラミングをする必要がないため,施設職員や作業員などはこのシステム
を楽に使えるようになると感じた.筆者は18日の「VR・AR・3D2」セッションにて
「非接触温冷刺激の時分割提示手法の開発」について発表した.本研究では,継続
的な冷覚を非接触で制御することを目指し,温冷覚の時間応答性を着目し,非接触
温冷刺激の時分割提示手法を開発した.システムが動作している動画を流し,提案
手法を分かりやすく伝えるように心がけた.座長の先生からの質問に加えて
Discordに多くのコメントや質問を頂き,それらの議論から今後の研究へのヒント
を得ることができた.なお幸いなことに本発表は優秀発表賞に選出いただいた.学
会での初めての受賞は率直に嬉しく,この場を借りて,関係者の方に感謝したい.
また,18日に静岡県を代表する企業のひとつである株式会社タミヤによる特別講
演「インタフェースとしてのホビー」が行われていた.今回の特別講演では,タミ
ヤのものづくりの歴史を紹介するとともに,タミヤの教育をものづくりとプログラ
ミングの観点から述べられた.タミヤは「思いを実現させる力」は「生きる力」を
育成するという考えを持ってカムプログラムロボット工作セットを開発し,タミヤ
ロボットスクールを開催している.子供は自分自身でプログラムを作り,ロボット
を作製することを通して学ぶため,教育に役に立つと考えられる.
今回のコロキウムは新型コロナウイルス感染症対策として,オンラインでの
開催となった.実行委員会が発表者マニュアルと聴講者マニュアルを作成し,参加
方法と必要なアプリの操作を分かりやすく伝えた.オンラインで会議が行われて
いたが,混乱が見られず,逆に活発な議論が行われていた.なお,ヒューマンイン
タフェースシンポジウム2021は,2021年9月に仙台で開催される予定である.
公式サイト: https://jp.his.gr.jp/hic2/