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2017年1月29日

ACM SIGCHI Asian Symposium 参加報告

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|◆ ACM SIGCHI Asian Symposium 参加報告
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尾形 正泰(産総研)
 2016年12月18日,東北大学電気通信研究所にて第1回ACM SIGCHI Asian Symposiumが開催
され,約50名が参加した.これは同日発足した「Japan ACM SIGCHI Chapter」が主催した.本
シンポジウムでは,Japan ACM SIGCHI Chapterの発足と,アジア地域のHCI研究コミュニティ
発展のため国際的な連携を深めるために各国のHCIコミュニティの関係者が招待され,それぞれのH
CIコミュニティでの取り組みについて発表・議論を行った.
 はじめに北村喜文氏(東北大学)からJapan ACM SIGCHI Chapterの設立の経緯と趣旨,設立
メンバについて紹介があった.続いてZhengjie Liu氏(中国・大連海事大学),Anirudha Jos
hi氏(インド・IIT Bombay),Jinwoo Kim氏(韓国・延世大学),Eunice Sari氏(インド
ネシア・UX Indonesia)からそれぞれの地域のコミュニティの運営について紹介があった.Jinw
oo Kim氏は韓国のHCIコミュニティでは企業の方を招待したイベントを開いており,近年の韓国の
HCI研究業界が盛り上がっている様子を紹介した.とくに日本のHCI研究者に対して,産業との積極
的な連携を勧めていた.
 Philippe Palanque氏(フランス・University Toulouse 3)はCHIの失敗の事例として,
ヒューマンファクタ,人間工学の研究者が他の学会に移動したことなどを紹介した.また,これま
での参加者,投稿数,予算を元にした未来予想を計算して紹介した.2021年にはCHIがアジアに再
び帰ってくることが決まっており,現在よりもさらに多くの参加者が見込めると話した.Ellen D
o氏, Weiquan Lu氏(シンガポール・National University of Singapore)はメンバの一
人としてシンガポールの研究者のためにGoogle GroupsのフォーラムやFacebook Groupを組織
して,積極的な情報交換を行っている事例を紹介した.Rob Lindeman氏(ニュージーランド・Un
iversity of Canterbury)はAR・VRに加えてHRIも研究しているHuman Interface Techno
logy (HIT) Labを紹介した.Bing-Yu Chen氏(台湾・National Taiwan University)は
TAICHI (台北/台湾CHI)の活動を紹介した.毎年開催しており,今年は200名の参加者があった.
学生中心のOpenHCIという1週間のワークショップとCHI / UIST併設のワークショップを開催し
ている.学会参加者のためにCHI / UISTの会期中に “Taiwan Night” という交流パーティも2
013年から開催して,参加者は100名程度になっている.最近ではAUI (Asian Workshop on Us
er Interface)をUIST 2016にあわせて開催し,Jun Rekimoto氏, Woontack Woo氏, Bing
-yu Chen氏の3名でオーガナイズした.
坂本大介氏(東京大学)は日本の取組みとしてその年度に採択されたすべてのCHI論文を参加者で
分担して読むCHI勉強会(CHI Seminar)を紹介した.「良い論文を読んで良い論文を書く」こと
が目的で,英語ネイティブではない日本人が論文テクニックを学ぶ意味もある.最後に矢谷浩司氏
(東京大学)から自身も運営に関わった日本開催の国際学会について紹介があった.UIST 2016で
は東京大学を回るデモツアーが組まれ,参加者が日本の研究に触れた.国内学会でのダイバーシテ
ィへの貢献も行われており,情報処理学会インタラクションに併設されたWomen’s Luncheonの
事例を紹介した.
 シンポジウムの中で明らかになったのは,アジアにおける日本のHCIの存在感だ.CHI参加者数の
統計では日本,韓国,中国,台湾の4地域が上位を占めるが,最多の参加者を占めるのが韓国だ.
ソウルで開催されたCHI 2015での韓国国内の参加者を抜いても,近年のCHI参加者の中でトップに
立っている.この点からも,アジアでの最初のCHIが韓国で開催された理由が伺える.日本のHCIコ
ミュニティは古くから活動しているが,組織としての活動が周知されていなかったり,学会以外に
大学や企業の研究者が交流する機会が少なかった.近年ではCHI勉強会など,企業研究者やエンジ
ニアも巻き込んだイベントが開催されている.今後もアカデミックと産業,HCIとその関係領域の
交流が継続され,世界におけるアジアと日本のHCIコミュニティの発展のために,Japan ACM SI
GCHI Chapterの活躍が期待される.

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